公開日:2025.06.19 更新日:2025.06.19
自助・共助・公助とは?災害時の具体例についてご紹介
災害が発生した際に、自身の安全確保はもちろん、地域や行政と連携して被害を最小限に抑えるためには、「自助」「共助」「公助」という3つの考え方が重要となります。
これらの要素がそれぞれどのような役割を担い、災害時にどのような例があるのかについて理解することは、防災対策を進める上で非常に役立ちます。
自助・共助・公助の定義
災害への備えを考える上で基本となるのが「自助」「共助」「公助」という3つの考え方です。
これらは、災害発生時に自分自身や地域、行政がそれぞれ果たす役割を指しており、互いに連携することで効果的な災害対策が可能となります。
自助とは何か
自助とは、災害時やその際に備えて、自分自身の安全を守るために自ら取り組むことを指します。
自宅の耐震化や家具の固定といった事前の備え、非常用持ち出し袋の準備、災害時の情報収集や避難行動などが含まれます。
これらの自助の取り組みは、自身の命を守り、災害時の生存率を高める上で最も重要な行動です。
共助とは何か
共助とは、災害時に地域住民や身近な人たちが互いに協力し助け合うことです。
阪神・淡路大震災では、倒壊した家屋の下敷きになった人の約8割が近隣住民によって救助されたという例があり、共助の重要性が示されています。
共助には、安否確認や救出活動、避難所での協力、情報の共有などが含まれます。
地域コミュニティにおける日頃からの良好な関係づくりが、災害時の共助を円滑に進める基盤となります。
公助とは何か
公助とは、国や地方公共団体、警察、消防、自衛隊などの公的機関による支援のことです。
災害発生後の救助活動、避難所の設置・運営、物資の供給、インフラの復旧などがこれにあたります。
公助は被災した人々や地域を広範囲にわたって支援する役割を担いますが、大規模災害時には公助だけでは対応に限界があるため、自助や共助による取り組みと連携することが不可欠です。
災害時における自助の重要性
災害が発生した際、特に発災直後は救助や支援がすぐに届かない可能性があります。
そのため、災害時においては、まず自分自身の安全を確保し、自力で生き延びるための「自助」が非常に重要です。
日頃からの備えや知識は、予期せぬ状況下での適切な判断と行動を可能にし、生存の可能性を高めます。
なぜ自助が必要とされるのか
災害発生直後は、道路の寸断や通信網の麻痺などにより、行政や消防といった公的な支援(公助)がすぐに被災地に到達できない場合があります。
また、大規模な災害が発生した際には、被災者の数が膨大になり、限られた人員や物資では全ての被災者に行き渡るまでに時間を要することが想定されます。
このような状況下で、自身の命を守り、その後の生活を維持するためには、まず「自助」として自らの安全を確保し、一定期間自立して生活できるだけの備えをしておくことが不可欠となるのです。
自分自身が安全であることで、家族や地域の人の救助・支援に回ることも可能になります。
災害に備える自助の取り組み
災害に備えるための自助の取り組み例は多岐にわたります。
非常食や飲料水の備蓄、防災リュックの準備、家具の固定といった物理的な準備に加え、ハザードマップで地域の災害リスクを確認したり、家族との連絡手段や避難場所について事前に話し合っておくことも重要な自助の取り組みです。
これらの自助の取り組み例を日頃から実践することで、災害発生時の被害を最小限に抑え、迅速かつ安全な行動につなげることができます。
食料の備蓄について
災害時には、食料や飲料水などのライフラインが寸断される可能性があります。
そのため、最低でも3日分、できれば7日分程度の食料を家庭で備蓄しておくことが推奨されています。
備蓄する食料は、特別な非常食だけでなく、普段から食べ慣れているレトルト食品や缶詰、乾麺なども含めると良いでしょう。
これらは賞味期限が長く、調理が容易なものが多いため、災害時でも比較的普段に近い食生活を送ることが可能になります。
定期的に備蓄品を点検し、賞味期限が近いものから消費していく「ローリングストック」という方法を取り入れると、無駄なく効率的に備蓄を維持できます。
備蓄品の準備
災害に備える自助の取り組み例として、食料や飲料水以外にも様々な備蓄品の準備が必要です。
具体的には、トイレットペーパーやティッシュペーパーといった日用品、常備薬、救急セット、携帯ラジオ、懐中電灯、予備の電池、カセットコンロやカセットボンベなどが挙げられます。
また、停電に備えてモバイルバッテリーを用意したり、寒さをしのぐための毛布や簡易寝袋なども検討すると良いでしょう。
これらの備蓄品は、災害発生直後から数日間を自力で乗り切るために役立ちます。
家族構成や状況に合わせて必要なものをリストアップし、定期的に確認・補充することが大切です。
防災リュックの用意
災害発生時にすぐに避難が必要となる場合に備え、防災リュックを用意しておくことは重要な自助の取り組み例です。
防災リュックには、避難場所へ移動する際に最低限必要となるものを詰めておきます。
具体的には、飲料水、非常食(手軽に食べられるもの)、携帯ラジオ、懐中電灯、予備の電池、モバイルバッテリー、常備薬、救急セット、軍手、タオル、ウェットティッシュ、マスク、現金、身分証明書のコピーなどです。
家族一人につき一つ用意し、すぐに持ち出せる場所に置いておきましょう。
子どものいる家庭では、おむつや離乳食、お気に入りのおもちゃなども忘れずに含めると安心です。
家具の固定
地震発生時の大きな揺れによる家具の転倒は、負傷の原因となるだけでなく、避難経路を塞いでしまう可能性もあります。
そのため、家具の固定は重要な自助の取り組み例の一つです。
タンスや食器棚などの背の高い家具は、L字金具や突っ張り棒などを活用して壁にしっかりと固定しましょう。
また、冷蔵庫やテレビなども、滑り止めシートや固定ベルトなどを使って対策を講じることが推奨されます。
特に寝室や子ども部屋など、長時間過ごす部屋の家具は優先的に固定を行うと良いでしょう。
これにより、地震による二次的な被害を防ぐことにつながります。
ハザードマップの確認方法
地域の災害リスクを知ることは、適切な避難行動をとる上で不可欠な自助の取り組み例です。
自治体が作成・公開しているハザードマップを確認することで、住んでいる地域がどのような自然災害(洪水、土砂災害、地震による液状化など)に対してリスクが高いのかを把握できます。
ハザードマップは、各自治体のウェブサイトや窓口で入手できるほか、国土交通省のハザードマップポータルサイトでも確認できます。
ハザードマップで自宅や職場の周辺のリスク、指定緊急避難場所や避難経路を確認し、避難計画を立てておきましょう。
家族との連絡手段の確認
災害発生時には、電話回線が混雑し、通常の通話が難しくなることがあります。
家族が離れた場所にいる際に安否確認や集合場所の連絡をとるために、複数の連絡手段を確認しておくことは重要な自助の取り組み例です。
災害用伝言ダイヤル(171)や災害用伝言板(web171)の使い方を家族で共有しておきましょう。
また、スマートフォンの災害時モードや、LINEなどのSNSを活用した連絡方法についても事前に話し合っておくと有効です。
集合場所についても、自宅が無事だった場合、避難所へ避難した場合など、複数のシナリオを想定して決めておくことが望ましいです。
地域の災害情報の入手
災害時には、正確かつ迅速な情報収集が命を守るために重要です。
自治体からの避難情報や被害状況などを把握するために、複数の情報入手経路を確保しておくことは自助の取り組み例です。
自治体の防災無線や広報、ウェブサイト、SNSなどを日頃から確認するようにしましょう。
テレビやラジオの特別番組、インターネットニュースなども有効な情報源となります。
また、地域の住民同士で情報を共有することも、混乱を防ぎ、適切な行動をとる上で役立ちます。
防災に関する活動への参加
地域の防災訓練や防災講座に積極的に参加することも、自助の取り組み例として挙げられます。訓練を通じて、避難経路の確認や応急手当の方法などを実践的に学ぶことができます。
また、地域の防災活動に参加することで、近隣住民との顔の見える関係を築くことができ、災害時の共助につながります。
地域の特性に応じた防災対策や、避難所運営に関する知識を得ることもでき、いざという時に冷静に行動するための助けとなります。
災害発生時の自助行動
災害が発生した場合、まず最も重要なのは自分自身の安全を確保するための「自助」行動です。
揺れがおさまってからの火元の確認や家族の安否確認、正確な情報に基づいた落ち着いた避難など、状況に応じた冷静な行動が求められます。
これらの自助行動は、日頃からの備えや知識があるかどうかが大きく影響します。
身の安全の確保
地震発生時には、まず頑丈なテーブルや机の下などに身を隠し、頭部を保護することが最優先です。
窓ガラスや照明器具の破片、落下物から身を守るようにしましょう。
揺れがおさまるまでは無理に移動せず、姿勢を低くして揺れに備えます。
屋内にいる場合は、倒れてくる可能性のある家具や家電から離れることも重要です。
屋外にいる場合は、建物や電柱、看板などから離れ、開けた場所に移動して身の安全を確保します。
火元の確認と初期対応
地震の揺れがおさまったら、速やかに火元の確認を行いましょう。
ガスコンロやストーブなど、火を使っていた場合はすぐに消火します。
焦らず落ち着いて行動することが大切です。
もし小さな火災が発生している場合は、消火器や濡らしたタオルなどで初期消火を試みます。
ただし、火が天井に燃え移るなど、初期消火が難しいと判断した場合は、すぐに避難に切り替え、近隣に助けを求めるなどして周囲に知らせることが重要です。
家族の安否確認
自身の安全が確保できたら、家族の安否確認を行います。
一緒にいる家族には声かけを行い、離れた場所にいる家族には、事前に決めておいた連絡手段(災害用伝言ダイヤルやSNSなど)を使って連絡を試みます。
すぐに連絡が取れない場合でも、焦らず繰り返し試みることが重要です。
集合場所についても事前に家族で話し合っておいた場所に集まるなど、落ち着いて行動するように心がけましょう。
正確な情報の収集
災害発生時は、デマや不確かな情報が飛び交うことがあります。
混乱を避けるためにも、テレビ、ラジオ、インターネット、自治体の公式情報など、複数の信頼できる情報源から正確な情報を収集することが重要です。
避難指示、津波情報、気象情報などを確認し、今後の行動の判断材料とします。
スマートフォンの利用は電力を消費するため、予備のバッテリーを用意しておくか、利用を最小限に抑えることも考慮しましょう。
落ち着いた避難行動
避難が必要な場合は、落ち着いて行動することが大切です。
事前に確認しておいた避難経路を通り、指定された避難場所へ向かいます。
避難の際には、火の始末を再度確認し、ブレーカーを切るなど、二次災害の防止に努めましょう。
また、動きやすい服装と丈夫な靴を着用し、非常用持ち出し袋を持って避難します。
高齢者や小さな子ども、体の不自由な方がいる場合は、周囲と協力しながら安全な避難を心がけることが重要です。
救助を待つ場合の対応
建物倒壊などに巻き込まれ、すぐに脱出できない場合は、救助を待ちます。
体力温存のため無駄な体力の消耗は避け、落ち着いて行動することが大切です。
音が響きやすい場所で、定期的に笛を吹いたり、固いもので壁や柱を叩いたりして、外部に自分の居場所を知らせます。
スマートフォンがある場合は、バッテリーの消耗に注意しながら、助けを呼ぶ連絡手段として活用することも考えられます。
災害時における共助の取り組み
災害時における共助の具体的な取り組み例としては、地域住民同士での声かけや安否確認、初期消火活動、救出・救護活動、避難誘導、避難所運営への協力などが挙げられます。
これらの共助は、行政による公助の手がすぐに届かない発災直後において特に重要な役割を果たします。
日頃からの地域での交流や防災訓練への参加を通じて、顔の見える関係を築いておくことが、いざという時の円滑な共助につながります。
地域での協力
災害発生時には、地域住民同士が協力することが非常に重要です。
近所の人と声を掛け合い、お互いの安否を確認することから始まります。
高齢者や体の不自由な方など、避難に支援が必要な人々への声かけや避難誘導なども地域の協力によって円滑に進められます。
また、避難所での共同生活においては、物資の配分や清掃、炊き出しなど、様々な場面で住民同士の協力が不可欠となります。
防災訓練の実施
地域での防災訓練は、共助の力を高める上で有効な取り組みです。
地震や火災、洪水など、様々な災害を想定した訓練を行うことで、住民は災害時の適切な行動や役割分担について学ぶことができます。
避難経路の確認や、初期消火、応急手当の方法などを実際に体験することで、いざという時に冷静に対応できる能力が養われます。
訓練を通じて住民同士の連携が深まり、地域の防災力向上につながります。
防災資機材の準備
地域で共有する防災資機材の準備も、共助の取り組みの一つです。
自主防災組織などを中心に、消火器やAED、救助工具、担架、投光器などを備蓄しておくと、災害発生時に迅速な初期対応が可能となります。
これらの資機材をどこに保管し、誰がどのように使用するのかを事前に決めておき、訓練などを通じて使い方を習得しておくことも重要です。
地域でこれらの資機材を共有することで、より多くの命を救い、被害の拡大を防ぐことが期待できます。
災害時における公助の取り組み
公助は、国や地方公共団体などの公的機関が主導する災害対策であり、災害に強いまちづくりから災害発生後の広範な支援まで多岐にわたります。
災害に強いインフラ整備や法制度の構築、災害発生時の救助活動や避難所運営、被災者の生活再建支援などが公助の主な取り組みです。
災害に強いまちづくり
公助における災害に強いまちづくりには、耐震性の高い建物の普及促進や、道路、橋梁、堤防などのインフラ整備が含まれます。
また、浸水想定区域や土砂災害警戒区域などの指定、ハザードマップの作成・公開による住民への情報提供なども重要な取り組みです。
さらに、公園や学校などを災害時の広域避難場所や物資集積拠点として整備することも、公助によるまちづくりの一環と言えます。
災害発生後の対応
災害発生後、公助は人命救助を最優先に活動を開始します。
消防、警察、自衛隊などが連携して被災地の捜索や救助を行います。
同時に、被災者の避難誘導や避難所の設置、食料・飲料水・毛布などの緊急救援物資の配布も進められます。
被災状況の把握や情報の収集・伝達も公助の重要な役割であり、正確な情報を住民に提供することで混乱を防ぎ、適切な避難や行動を促します。
避難場所の設置と運営
災害により自宅での生活が困難になった被災者のために、公助として避難所が設置・運営されます。
学校の体育館や公民館などが指定避難所として事前に定められており、災害発生後、速やかに開設されます。
避難所では、被災者の受け入れや食料・物資の提供、情報の提供、健康管理などが行われます。
避難所の運営には地域の住民が主体的に関わる共助の要素も大きく、公助と共助が連携して円滑な運営を目指します。
災害救助法の適用
大規模な災害が発生し、被災者の生活が著しく困難になった場合、災害救助法が適用されることがあります。
災害救助法に基づき、国や地方公共団体は、避難所の設置や応急仮設住宅の供与、炊き出しや被服の支給、医療・助産、埋葬などの救助を行います。
これは公助の根幹をなすものであり、被災者の最低限の生活を保障し、早期の生活再建を支援するための重要な制度です。
自助・共助へのサポート
公助は、直接的な救助や支援に加え、自助や共助の取り組みを側面からサポートする役割も担います。
住民向けの防災訓練や防災教育プログラムの実施、ハザードマップや防災情報の提供などがこれにあたります。
また、自主防災組織への補助金交付や活動支援、災害ボランティアセンターの設置・運営なども、共助の活動を促進するための公助の取り組みです。
公助が自助・共助を後押しすることで、地域全体の防災力向上につながります。
公助には限界があること
公助は、災害時において避難所の設置や運営、災害情報の提供、救援物資の配布、復旧作業など、広範な支援を提供します。
しかし、阪神・淡路大震災や東日本大震災のような大規模な災害では、公的な機関だけではすべての被災者への迅速な支援が困難になることが明らかになりました。
これは、被災者の数が多岐にわたることに加え、行政自体も被災し、機能が麻痺する可能性があるためです。
そのため、公助はあくまで自助や共助の取り組みを補完するものと理解し、公助だけに頼るのではなく、個々人や地域での備えを進めることが重要です。
防災における自助・共助・公助連携の重要性
災害対策において、自助・共助・公助の3つの要素はそれぞれ独立しているのではなく、互いに連携し補完し合うことが非常に重要です。
公助には限界があるため、住民一人ひとりの自助の力が基盤となり、地域コミュニティによる共助がそれを支え、公助が全体の支援を補完するという連携体制が理想的です。
この三者が円滑に連携することで、災害発生時の被害を最小限に抑え、迅速な救助・復旧、そして早期の復興を実現することが可能となります。
日頃からそれぞれの役割を理解し、連携を強化するための取り組みを進めることが、災害に強い社会の実現につながります。
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この記事を書いた人

防災士
齊藤
筆者プロフィール
2023年に防災士を取得。
防災士の知識を活かし、数多くの防災イベントにも携わる。
現在は防災訓練VRのセミナーも。